かたいなか

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「アプリ入れて330日くらい、連載風の投稿続けて思ったんだけどさ。多分、通年スパンの連載モノとこのアプリ、相性少し悪い、気がする」
「I LOVE」と言われても、「アイデア」だの、「アヤメ科」だの、あとパックご飯に家電製品しか思い浮かばぬが。某所在住物書きは頭をガリガリかきながら、これで少なくとも10度目の恋愛ネタに苦悩した。
4月か3月末あたりには「My Heart」なんてお題もあったが、もう、何を投稿したやら。

「3個程度のお題にまたがってて、1話1話独立したハナシとしても読める物語なら、長編投稿、無理じゃねぇと思うの。問題は数ヶ月前の投稿との繋がりよ」
物書きは話題を不得意なLOVEから離し、言った。
「なんでって?……過去参照方法がスワイプしかねぇから面倒。自社調べ」
キャラの通年使いまわしは確実に可能よ。問題は「今日は◯ヶ月前の物語の伏線回収です」なんよ。
物書きはため息を、それはそれは大きなため息を――

――――――

今日は、多くの地域で2月から3月並みの最高気温だそうですね。それでもさすがに、朝夕はどうしても寒い気がするのです。
今回は都内某所の某稲荷神社から、飲食的な意味でちょっとほっこり、不思議な子狐のおはなしです。
都内にしては深め深めの森の中、いつか昔の東京を残す神社敷地内の一軒家に、人間に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておるのです。

最低気温5℃未満の朝、狐の一家の末っ子が、ふわわ、寒さで少し早めに起きました。
善き化け狐、偉大な御狐となるべく、稲荷のご利益ゆたかなお餅を作って売って、絶賛修行中の子狐。
最近ようやく、人間のお得意様がひとり付いたところ。昨日もぺったん、稲荷のご加護と、狐の不思議なチカラがちょいと詰まったお餅を作って売って、お得意様にちょいちょい遊んでもらいました。
お家に帰ってぐーぐー、すぴすぴ。夢の中でもお得意様と鬼ごっこしていた子狐は、結果毛布とお布団が、おなかの上からログアウト。そりゃ寒いのです。

「寒いなぁ、さむいなぁ」
コンコン子狐、愛しの毛布に潜り込みますが、ちっとも暖かくありません。毛布の溜め込んだ熱が、長いログアウト時間のせいで、無くなってしまったのです。
「ホットミルクで、あったまらなきゃ」
あんまり暖かくない毛布の中に潜っていたって、人間より少し高めな狐の体温をもってしても、すぐに暖かくはならぬのです。
コンコン子狐、愛しの毛布から抜け出しまして、とてとてとて、とてちてちて。お台所に行きました。

今こそ、昨日お得意様が飲んでた(のを子狐が興味本位でペロペロした)ホットミルクを試しましょう。
大人な背伸びドリンク、ピリピリ味、ショウガのきいたジンジャーホットミルクを試しましょう。
あのカッコいい味の飲み物を、少し疲れた目をして、遠くを見ながら、ザンギョー云々ジョーシ云々、カッコいい呪文を呟きつつ、おなかに収めるのです。
それはそれは、カッコいいに違いありません。子狐、子供なので「カッコいい」を愛しておるのです。

「牛乳と、ちょっとのお砂糖と、あとなんだっけ」
朝ご飯の準備をしている大好きな大好きな母狐とおばあちゃん狐に、ちょっと牛乳を分けてもらって、
ふつふつ、ふつふつ。小ちゃな子狐用のお鍋で加熱。乳脂が焦げ付かないように、弱火はもちろん、砂糖もちゃんと、振りましょう。
「そうだ。ジンジャーと、シナモンだ」
砂糖が溶けて、牛乳が温まったら、某青い小瓶のジンジャーパウダーとシナモンパウダーを、
どれくらい入れれば良いか分からず、振り振り、フリフリ。ひとまず適当に投下しまして……

「わっ、からいッ!」
ぎゃぎゃっ!ぎゃぎゃぎゃっ!!
あんまり投下し過ぎたらしく、子狐、ピリピリ大量ジンジャーの効果で、一気に目が覚めました。
「おかしい、おかしい!おとくいさんが飲んでたミルク、カッコいい味だったのに!コレからいッ!」
ぎゃん!ぎゃん!
舌に残って取れないジンジャーのピリピリと、そのピリピリに打ちのめされて暴れる敗北は、子狐の愛する「カッコいい」から、随分離れておりましたが、
少なくとも、そのジンジャーのおかげで、体はポカポカ温まりましたとさ。 おしまい、おしまい。

1/30/2024, 12:00:28 AM