Ryu

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学校帰り、スマホに1件のLINE。
高校のクラスLINEだ。
開くと、たった二文字、「走れ」
走れ?なんで?送信者は不明、とある。
イミフだが、友達と二人、フザケて走り出す。
直後、さっきまで自分達がいた所に、ビルの屋上に据え付けられていた巨大な看板が落ちてきた。

次の日、学校で確認したところ、数人の生徒がケガをして入院していることが分かった。
きっと、走らなかった生徒達だろう。
学校に来ていても、ケガを負っている生徒は何人もいた。
あんなLINE1件では、ほとんどの生徒が動かなかったってことだ。

次の指示は数日後の朝、登校中に届いた。
「止まれ」の三文字。
もちろん僕は立ち止まった。
目の前を、暴走トラックが走り抜けてゆく。
守られてる、そう確信した。

前回のことがあったからか、今回の負傷者は少なかった。
しかし、暴走トラックに跳ねられ、命を落とした生徒が一名。
先生にも相談し、メッセージの送信者を突き止めようとしたが、結局何も分からなかった。

それからは、怯えて過ごした。
守られているはずだが、1件のLINEを見落とせば命取りになる。
既読スルーは出来ない。当然、未読スルーもだ。
暇さえあればスマホを見つめて、LINEの着信音量を最大にしたり、バイブとの併用にしたり。

不安に耐えきれず、クラスLINEから抜けた生徒もいた。
それが正解なのかは誰にも分からない。
友達の一人は言った。
「これは壮大な神々の遊びってやつだよ。俺達は操られ翻弄されてるんだ。為す術もない」
んな訳あるか。芸人のネタじゃあるまいし。
そう思った翌日のニュースでは、この現象が世界的に広まっていることを告げていた。

つまりは、粛清ってやつか。
あれから、いくつかの指示が送られた。
僕はすべての指示に従っている。
他の人達はどうなのか、もはや分からない。
この非現実的な現象を鼻で笑っていた大人達は淘汰され、学校は休校となった。

こうして、究極の指示待ち人間の出来上がりだ。
しかも、世界中にあふれている。
誰もが、死と隣り合わせの現実を生きている。
例外は、スマホやタブレット等の通信機器を持たぬもの。
その数は今や、限りなく少ない。

世界は、数件のLINEで滅ぼされるのかもしれない。

7/11/2024, 12:16:29 PM