美咲希

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○年前の春先、私のクラスに女の子が転校して来た。

彼女は、特段可愛らしい訳でも面白い話が出来る訳でも無かったが、閉鎖的な田舎町で育ってきた私たちにとっては、都会から来た転校生は新鮮だった。

休み時間になると毎回彼女の机を囲うように人だかりが出来ていたと思う。
それでも1週間程すると落ち着きを見せるようなったが、

それからしばらくがたち、彼女がクラスに馴染んで来た矢先の事、
彼女がトラックとの事故に合い意識不明となった。

担任から彼女事を聞いた時の事は、未だに忘れられない。一瞬、唖然としたような空気が流れ、現実離れした様な不安な感覚だった。

私は彼女と特段親しかったわけでは無かったが、クラスメイトが事故にあったのだ。心配したし回復を願い何人かで神社に願掛けを行なったりした。

彼女の見舞いもしたかったが、担任は入院先の病院を教えてくれなかった。後で知ったが父親の意向だったそうだ。



事故から半年たったある日、街中で彼女を見た。

私は驚いたが、元気になった彼女を見ると嬉しくなりそのまま声を掛けようと近づくと彼女は足早にどこかへ行ってしまった。

心配していたのに無視するなんて腹立たしくなり、それ以上追うことはしなかった。
もしかしたら気づいていないだけかもしれない。という思いもあった。
あの調子じゃ学校に帰って来る日も近いんだろう。
そう単純に考えていた。


しかし、私が彼女にもう一度会うことは無かった。



あの日、なぜ彼女を追いかけなかったのか、私は今でも後悔している。

5/16/2024, 3:12:50 AM