街は全て焼き尽くされた。
教会も、学校も、図書館も、ショッピングモールも、何もかもが瓦礫の山となり、灰色一色になった。
ウェディングベルも、始業のチャイムも、子供の歓声も、人々のざわめきも、何もかもが無くなった。
「·····」
あのざわめきが戻ってくるまで、どれほどの時間が必要なのだろう。
作り上げるには膨大な時間がかかるが、失うのは一瞬だ。けれど人の力ではどうにもならないものがあって。
「·····」
灰色の世界を見続けるのが苦しくて、思わず蹲る。
通りを吹き抜ける風の音だけが、私の耳に鋭く響いていた。
END
「失われた響き」
11/29/2025, 11:46:35 PM