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いつもなにかに追われていた。それはきっと誰もがそうで、みんなみんな、得体の知れないなにかに怯えて走っている。
私も走っていた。ただひたすらに、漠然とした恐怖に怯えてひた走る。

それってなんだろう。わからない。わからないけど怖い。怖くて仕方ない!向き合うことも正体に気づくことも怖くて怖くて、怖くて、

「だれかたすけて……」

どうか誰か私に救いをもたらして。この、終わらない道のりを、必死に走る私に。誰でもいいから、私の涙を拭ってよ。もう大丈夫って抱きしめて。



いつもなにかに追われていた。
きっと、なんて曖昧な言葉は使わない。
もう私は知っている。

みんな、この世界に生きるみんながなにかに怯えている。誰もが無意識に救いを求めていて、私もそうだ。
みんな救われたいと思っているなら、みんな、誰かを救う余裕なんてない。

たすけてくれる"だれか"なんて、いない。


「ならわたしが」
私が私を救わなきゃ。


そして私は駆け出した。今までよりもずっと力強く、必死に、執念にしがみついて。
いつもなにかに追われている。
それは苦しいけれど、でも、きっと自分を救うなにかになり得るのだと、信じたいと思った。



5/30/2023, 11:25:08 AM