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 俺は今、異世界にいた。
 突然女神により、異世界に転移させられたのだ。
 曰く、チートあげるから世界救ってくれ。
 迷惑どころの話ではない。

 私は忙しいのだ。
 とっとと世界を救って元の世界に帰る。
 そして女神にお灸をすえる。

 ただ問題なのは、もらったチートがミカンがたくさん出せるというものだ。
 特にリスクもなく、無制限で、食べれば完全回復するミカンを出せるようになった。
 だから何なんだ、と思わなくもない。
 なぜそれがミカンでないといけないのかとも。

 だが、ある利用方法を思いついた。
 このアイディアなら、世界を救うのもすぐに終わるだろう。
 しかし、倒すべき悪の存在の場所が分からない。
 見渡す限り地平線だけ。
 目を凝らすと、煙のようなものが見えた。
 人がいるかもしれない。
 とりあえず情報収集といこう。

 しばらく歩いていると、物陰から男が現れた。
「金目のものを出しな。
 そうせうれば命だけ―げええええええ」
 盗賊は悲鳴を上げる。
 よかった、これは効くみたいだ。

 私が盗賊にやったこと。
 それは出したミカンの汁で目つぶしである。
 非人道的だという人もいるかもしれない。
 失明するだろうと。
 だが、このミカンを摂取したものは完全回復するのだ。
 失明してもすぐに回復するから問題ない。
 つまり沁みるだけ。
 優しいね。

「沁みるか?やめてほしければ、言うことを聞け」
「誰がそんなことうわあああ、沁みるううううう。
 すみませんでした。いうこと聞きますぅ」
「いいだろう。では街に案内しろ」
「喜んで!」
 こうして私は下僕を一人手に入れた。
 幸先がいい。

 これなら世界を救うのも早いかもしれない。
 そして女神に目つぶしをくらわす。
 奴は私に許しを請うだろう。
 その時が楽しみだ。

 ビクビクする盗賊を横目に、私はミカンを食べながら高笑いをするのだった。

12/30/2023, 9:53:33 AM