「足音」
長く共に暮らした家族程になると、足音で誰が部屋の外を歩いているのかわかるようになる。
力強く床を軋ませて歩いてくるのは父。ぺたぺた急ぎ足で家中を駆け回っているのは母。同じく駆け回っているものの、音の感覚が短い弟。
大学生になって家を出るまでは、この判別法で間違いなかった。
だが、私が妻を連れて実家に帰るくらいの歳になると、いつもの判別法が通用しなくなっていることに気がついた。
父の足音が昔と比べて明らかに大人しくなっていた。母は家中を駆け回る事が減った。
そして、弟の足音の方が父と同じ音になっていた。
こんなところでも親の老いを知る事になろうとは思わなかったなあ。
8/18/2025, 12:21:58 PM