Day.39_『おもてなし』(グロ注意)
「さて、仕事の時間だ」
僕は、身支度を整えて部屋を出る。今日は、大事な大事な「お客様」がお見えになる日。丁重にしなければ。
っと、言っている間に来たようだ。
「ようこそ、お待ちしておりました」
頭を下げ、敬意を表す。
「んー!っ〜〜!」
おや、どうやら暴れていらっしゃるご様子。
……あぁ、口を閉じられているためだ。早く解かなければ。僕は、口にはめられたものを解いた。その瞬間、僕の鼓膜を破る勢いの怒号が飛んでくる。
「おい!俺をどうするつもりだ!」
ギロっと睨まれる。「お客様」も、かなりご立腹のご様子。これは、謝った方がいいだろう。
「大変申し訳ございません。少々、『運搬』に不備がございまして……」
「何言ってやがる!さっさと解放しやがれ!」
怒号が飛ぶ。僕は再び謝る。
「大変申し訳ございません。今後気をつけますので……お詫びと言ってはなんですが、こちらをお納めください」
「あ?」
僕は「それ」の拘束を解き、「お客様」に差し出す。「お客様」は、「それ」をジロジロと観察した後、「それ」の足をつまんで持ち上げた。
「お、おい!?なにがどうなって……っ!?」
状況を理解できていない様子の「それ」は、顔色が真っ青になる。やっと「お客様」のお顔が拝見できたらしい。
「お、おい……冗談だろ……?」
声が震えている。「お客様」を目の前にして、その態度はいただけない。きちんと、「お客様」には礼儀正しくしなければ。
「ま、待て……助け……!」
ボキッという音。「それ」の声は、それによってかき消された。そして、「お客様」は「それ」を大事に、丁寧に口に運ぶ。どうやら、気に入っていただけたらしい。苦労して手に入れた甲斐があった。
「お客様」は、「それ」をたっぷりと数分かけて全て平らげ、ゲフッという音を零した。満足気な「お客様」に僕は微笑む。
「ご満足いただけたようで、何よりでございます」
ペコッと頭を下げる。どうやら、機嫌も治してくれたらしい。良かった。その後、僕は頭を上げ、「お客様」に告げた。
「この先の宴会場にて、正式に『おもてなし』させていただきます」
手を差し出し、奥へ続く道を指し示す。指し示した先は、鳥居の先の神社。今日は、「神様」が集まる宴会なのだ。
「さぁ、ご案内いたします。参りましょう」
僕は、ゆっくりと歩き出し、「お客様」を連れて鳥居をくぐる。
さぁ、「本当の仕事(おもてなし)」はこれからだ。
10/28/2025, 2:01:09 PM