もんぷ

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凍える朝

 静寂に、くしゃみを一つ。掛け布団の柔らかな重みを感じずに、目をあける。いつもより早い時間の冷えた空気はひたすらに慣れない。目覚ましが鳴る前に目を覚ましたのはいつぶりだろうか。ふわぁと大きいあくびをしながら寝返りをうつと、潤んだ視界に金髪の頭が映る。この悪の元凶め。

「暑ない?」
その掠れた関西弁の文言に一悶着あったのは、つい昨日のこと。最低気温が一桁の日に暑いわけあるか、という自分の意見をなぁなぁにして抑えつつ、エアコンのリモコンを持つ手を離さない彼。ブランケットにくるまって凍える自分を傍らに置き、酒を楽しむ彼は満足気だった。そして一緒の布団にかぶさって眠りについたところまでは良かったが、どうせこのわがままな金髪頭は寝ているうちに暑い暑いと呟き、布団をどこかへ吹っ飛ばして眠りについたのだろう。その布団を何よりも大切に思う、もう一人の存在を忘れないでほしいのだけれど。

 むかついたので仕返しをすることにした。袖をまくっている彼の腕に収まり、抱きついて、自分の熱をお裾分け。こんな奴、暑くてうなされて起きてしまえ。それで布団を剥ぎ取ってしまっていたことを謝罪して、あのカフェのモーニングセットを奢ってくれたら良しとしよう。

11/2/2025, 10:17:25 AM