まだ私が小学生だったときの話だった。幼なじみの健太くんが、「冒険に行こう」と私を家から連れ出した。
お父さんもお母さんもいないし、このままどっかに行って迷子になったらどうしよう、死んじゃったらどうしようって怖くて、不安で、顔が真っ青になった。
手を引かれて連れてこられた先は、細長い路地の前。奥は暗くて何も見えない。
目を輝かせて奥に行こうとする健太くんを、私は必死に引き止めた。
「健太くん!怖いし、今日はやめとこうよ!」
「いいじゃん冒険なんだし」「よくないよ!迷子になったらどうするの!」
「迷子なんかならないよ、ほら行こう」「やだやだやだ!やめようよ!」
しつこく抵抗する私に嫌気が差したのか、健太くんは路地の奥に走っていってしまった。
あ……と思うももう遅い。健太くんは……それっきり姿を現さなくなった。
私は泣きじゃくりながら帰ってきて、健太くんのお母さんにそれを話した。すると、警察に行方不明届けを出すことになった。
それから十年。
私は18歳になった。今だに健太くんは帰ってこない。
あの道の先には何があったのだろうか………?
7/3/2024, 10:37:57 AM