ー心の灯火ー
僕は高校生の時、人間関係のもつれや勉強の不安から精神疾患になってしまった。
毎日朝起きると、心が持っていかれるような重さに襲われる。
学校の最寄り駅。地獄の入口。
電車から降りた時、たくさんの同じ学校の生徒が流れるようにエスカレーターに向かっていく。
ほとんどは知らない生徒。分かってる。
頭の中では分かっているけど、息が止まる。
人の視線がガラスのように突き刺さる。
これが恋なら良かったの、に―
今は楽しいことも考えられない。
時が戻ればなんて何度思っただろう
先生の「大丈夫だよ」も割れた心にかけた布みたいだ。
ある日、違うクラスにいる親友が僕のクラスにやって来た。
「なぁ、俺、この前髪切ったんだけど、坊主似合ってると思う?」
僕のことを何も知らないのか、
知らない振りをしてるのか…
「似合ってるよ。」
出来るだけの笑顔で言う。
「みんなバカにしてくんだよ」
「俺は似合ってるって言ってるじゃん」
「あははっ。確かに。ありがとな。
お前も俺さえいれば無敵だな。」
にひっと笑いながら肩を組む。
冷えきった僕の心に灯火が灯った。
蒼夏
9/2/2024, 11:35:21 AM