『木漏れ日の跡』
小さなベランダには、朝のわずかな時間だけ、隣のビルの隙間から光が差し込む。
私はそこに、使い古した籐の椅子を置いていた。洗濯ものを干す時に洗濯カゴをそこに置くとちょうどいいのだ。
三年前に引っ越してきた時から、その椅子は一度も動かされていない。
ある朝、ふと気がついた。
椅子の背もたれが、他の場所――座面や脚など――と比べて明らかに色が薄いのだ。
座面は洗濯カゴが光を遮り、脚の部分はベランダの壁があって日陰を作る。
背もたれだけが、三年前と色を変えた。
わずかな木漏れ日でもこんなに焼けるものなんだなぁ。
私はそこをそっと指でなぞった。
11/16/2025, 7:16:56 AM