バスクララ

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 自分なりに真面目にやったつもりだった。だけど思うような結果が出なかった。
 落ち込んでいる俺に友が慰めの言葉をかける。
「一生懸命何かに打ち込んだことや、一生懸命努力したこと。
それがどのような結果になっても、得た知識や経験はおそらくたぶんきっと忘れないはずだよ」
 ……なぜ最後をあやふやにしたんだろう。それさえなければ良い言葉だと思うのに。
「……なんで断言しないんだ?」
「ふとした時に忘れちゃうかもしれないじゃん。記憶喪失とかで。
未来なんて誰にもわかんないんだからさ。
だから僕はそういう言葉を言わないようにしているんだ。
断言してほしかったら言い直すけど?」
 ほとんど表情を変えずにそう返す友に俺は何だか笑いが込み上げてきた。
 そして笑顔のまま俺はこう答える。
「いや、そのままでいい。その方がお前らしいからな。
俺、今日のことおそらくたぶんきっと忘れないよ」
 友は少し驚いたような顔をしたがすぐにゆるく微笑んだ。
「うん。それでいいよ」
 忘れなくてもいい。忘れても構わない。
 そういうスタンスもたまにはいいかもしれないと友を見て思った。

8/20/2025, 2:21:27 PM