玄関に、お母さんの靴に寄り添うように置かれた見慣れない靴。
誰の靴だろう?って思ったけど、昨日お母さんが言っていたことを思い出す。
『明日、新しいお父さん来るから』
……一気に足が重くなる。
リビングから楽しそうな話し声が聞こえてきて、更に足が重くなった。
「すぅーー……はぁーー……」
大きく深呼吸し、気持ちを落ち着かせる。
よし、少しは足が軽くなった。
靴を脱ぎ、二人がいるリビングへ向かう。
「あっ、おかえり~」
「どうも、はじめまして。お邪魔してます」
ソファーに並んで座っているお母さんと男の人。
男の人はソファーから立ち、軽く頭を下げ、私に挨拶してくれた。
第一印象は、腰が低くて、優しそうな人。
「ほら、歩美も挨拶して」
お母さんに言われて、ハッとする。
「はじめまして。歩美です。どうも」
私も軽く頭を下げ、男の人に挨拶した。
「僕は、君のお母さんとお付き合いしている信二です。よろしくね。歩美ちゃん」
「もぉ~、歩美に敬語なんて使わなくていいのに~」
真面目に自己紹介している信二さんに、茶々を入れるお母さん。
信二さんは良い人そうだけど、私は好きになれない。
だって、お父さんが好きだったから。
お父さんは二年前、病気で亡くなった。
大好きなお父さんが死んで、私は何日も学校へ行かず、部屋にこもってずっと泣いていたと思う。
今でも、お父さんのことを思い出すことはよくある。
だから、信二さんが新しいお父さんになることを認めたくないって思うのだろう。
でも、嫌いになれない。
お母さんが、信二さんのことが好きだから。
私はお母さんの新しい恋を応援していたけど、いざ二人が結婚するってなると、複雑なのである。
「歩美?何突っ立ってるの?こっちへ来なさい。皆で話しましょ」
「う、うん……」
私は二人が座るソファーの……お母さんの横に座り、信二さんと私がお母さんを挟んだ状態になる。
「もぉー、歩美ったら。信二さんの横に座ればいいのに」
「どうやら僕は嫌われているみたいだね。ごめんよ歩美ちゃん。突然お邪魔しちゃって」
「べ、別に……」
とりあえず、信二さんと話して、お母さんに相応しいか、新しいお父さんとして相応しいか、判断しよう。
それでいいよね?お父さん。
「あ、あのぉ……信二さん」
「ん?なんだい?歩美ちゃん」
私はお母さんの背後から顔を出し、信二さんに話しかけた。
4/29/2025, 10:57:46 PM