「どうした?そんなところで。」
「あ、いや、考え事してただけ。…そっちこそ、何でここにいるの?」
「あー、彼女と喧嘩してさ。」
「そうなんだ。」
寒さで外に出るのも億劫になってきたこの季節。人気のない廊下でぼっーとしていたところを、よりによってこの男に見られてしまった。
「何で喧嘩したの?」
「それが、私のこともっと好きって言ってよ。他の人見ないでよって怒られてさ。俺はずっと伝えてきたつもりだし、彼女以外みてないんだけどな、って悲しくて。」
「…大変だね。」
自分はやったつもりなのに、相手はそうは思っていなかったって辛いよね。そう表面上で共感しても、心の奥底にあるずっと前に割り切ったはずの気持ちを思い出しそうになる。
「…俺、やっぱ戻るわ!話聞いてくれてありがとう。寒いからこれあげるよ。」
そういって渡されたのは、暖かいカイロだった。相手にとって何気ないことでも、好きな人だったらとても優しく見えたりする。
だって今も、ずっと前に諦めたはずのこの気持ちが忘れられない。
10/17/2023, 11:31:19 AM