シュグウツキミツ

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案外悪くないもんだな、とメジロは思った。食べるものも飲むものも確実に出てくるし、床も汚すとキレイにされるし。
特段飛ぶことに喜びもなかったんだよな、食べ物を探すためとかにせざるを得ないだけだったし。
窓際から空を眺める。葉の間の光も枝をそよがす風も、こんなにのんびりと味わうことだってできなかった。いつ自分や仲間を襲う敵がこないかと警戒していたし、雨宿りの場所の確保も大変だった。
空調の効いたリビングで、鳥かごの中のメジロは微睡んでいた。
そうだ、冬の寒い間だけは仲間と一緒だった。食べ物の位置や敵の存在を教え合い、なにより皆で固まると寒さをしのげた。
時には違う種類のやつらとも一緒だったな。お互いの鳴き声の意味を教え合ったものだった。
ガツンと揺れた衝撃で、メジロは目を覚ました。入っている鳥かごが床に落ち、入口が開いている。その向こうに大きな影がこちらを見つめていた。「ニャア……」
あの生き物は、外でも見たことがある。枝の下から熱い目で見つめ、地面に降りた仲間が捕まって連れ去られることもあった。
咄嗟に違う種類から教わった警戒音を口にした。
ヂヂヂヂヂ……

それがメジロの最期だった。

7/26/2024, 12:38:40 AM