—あなたのお悩みは?—
店のポストに宛名の無い一通の手紙が入っていた。白い封筒に包まれた一枚の紙にはこう書かれている。
『あなたの夢はかないましたか?夢はかなうと思いますか?』
小学生くらいの女の子が書いた字のように、鉛筆で丁寧に書かれた丸い字が並んでいた。
私の店では、悩み相談を受け付けている。地域の方々に寄り添いたい、と祖父が始めた企画である。それを、店を継いだ私も続けているというわけだ。
私は頭を悩ませて、真剣に考える。この子のことを考えた返答をしたい。
ペンを走らせる。
『お悩みを相談していただきありがとうございます。正直に言うと、私にはかなった夢もかなわなかった夢も、どちらもあります。
きっとこの相談をしてくれたあなたには、何か大きな夢があるのだと思います。
知りたくないと思いますが、夢が必ずかなうとは限らないです。ですが、色々なことを経験してきた私からいいことを教えます。
夢がかなってもかなわなくても、後から思い返せば、どんな出来事もいい思い出になる。
夢に向かう過程が大事なのです。あなたの良い報告を待っています。』
私の想いは伝わるだろうか。
店の入り口の返信用ボックスに、手紙をそっと入れた。
お題:終わらない問い
10/27/2025, 6:42:47 AM