死にたい少年と、その相棒

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  /幸せに

殺したいほどに嫌いだなんて言っても、俺の事を理解できるのはアイツしかいないし、アイツを理解してやれるのも俺しかいない。
一言で表すなら"唯一無二"だ。

だからか、アイツが自殺に失敗する度に、心の根の部分では安心する。
俺だって、何もアイツが不幸のどん底を歩いて欲しいと思っているわけではない。願うなら幸せに生きて欲しいが、俺らにはシアワセがよく理解できない。

「ねぇ、どうして皆生きろって無責任な事を言うんだと思う?」
珍しく自殺をしなかった背中合わせに座るアイツが、拗ねたような声を出した。
「生きてれば良いことあるなんて、死にたい人に言ったってただのエゴなのにね。その点君は、僕に生きろなんて言わないし、そこだけは好きだよ」
独り言にも似た声は、また小言を言われたのだろうと想像ができる。

「逆に、何で手前は死にてぇんだよ」
そう聞けば、少し考え込むような声で呻いてから、上を向く。後頭部がぶつかるが、気にしなかった。
「生きるなんて行為に、何か意味があるとは思えない。大抵のことは僕の想像通りに進むし、退屈だ。死ねば生きることの全体像が分かりそうだし、死んだ後がどうなるのかの想像もできないから、何だか楽しみじゃない?」
「理解できねぇな」
「別に。誰にも理解を求めてない」
言いながら体重をかけられる。重たい体をそのまま受け入れた。

こういうヤツは、このまま、幸せも生きる楽しみも見つけられないまま、だらだらと生を引き延ばせばいい。
そうして、本当に死ぬ直前になって、後悔すれば良いんだ。

3/31/2023, 12:16:03 PM