いろ

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【宝物】

 ちょっと綺麗な形の石に、真っ直ぐでツルツルの木の枝。そこらで簡単に手に入りそうなそれらは、私以外の人間には何の価値もないのだろう。だけど私にとっては、子供の姿をした可愛らしい友人がせっせと贈ってくれた愛おしい宝物だ。
「……これ。今日、タンジョウビなんだろう?」
 ぶっきらぼうな口調とは裏腹に、頭に生えた狐の耳が不安そうにゆらゆらと揺れている。差し出された真っ赤な紅葉を、両手で大切に受け取った。
「今年も覚えていてくれたんだ。お祝いしてくれてありがとう」
 一番鮮やかに色づいた紅葉を、君は毎年お祝いに贈ってくれる。今年も完全に乾燥させてから、栞に加工するとしよう。私がまだ幼い頃からずっと変わらない習慣だった。
 出会った頃に用意した大きなブリキのクッキー缶は、君と重ねた日々の思い出が数えきれないほど詰まった私の宝箱だった。

11/20/2023, 9:53:22 PM