「あ、お邪魔してるよ」
学校の裏山にある、大きな木の中で、貴方は色んなお菓子を頬張っていた。
小さい頃、貴方と面白半分で作った秘密基地。下にひいてある毛布もボロボロで、色んなところに貼っつけてある折り紙は、もうほとんどどこかへ消えてしまっていた。
それなのに、私たちはこうやって定期的にここにくる。
親に怒られた時、部活で思い通りにいかない時、勉強のストレスでどうにかなっちゃいそうな時。
「どうしたの?この時間に来るなんて、珍しいね」
「貴方もね」
「私は勉強が嫌で逃げ出してきただけ〜。もう、毎日毎日、結果も出ないのに頑張ってるのが馬鹿らしくなってさ」
「この前、模試だったもんね。結果は?」
「むしろ下がる一方でさ。先生も親も、もう期待してないみたい」
寂しそうにそういう貴方を横目に、私は床に広がってるお菓子に手をつけた。
「で、貴方は?」
私は、お菓子を取る手を止めた。
「うーん、色々」
「色々か。部活も勉強も忙しいもんね」
「それもあるんだけど、多分、違う」
「えぇー?じゃあなに?」
「今更になって、昔の傷が痛くなってきた」
「あら、まぁ手当の仕方なんて昔の頃は分からないもの。しょうがないよ」
「そうなのかな」
「そんな時は、しっかり栄養とるのが一番!ほらほら、まだまだお菓子は沢山あるよ!」
明るくそういう貴方には、到底悩みがあるとは思えなかった。けれど、きっと、貴方の背中には沢山の矢が刺さっているのかもしれない。
この秘密の場所は、少しだけ痛さを忘れられる、大切な場所なんです。
3/9/2025, 1:54:14 AM