「(一生分のあけおめ聞いたわ〜って、これ毎年思ってんな...。)」
私は今春、都会に出てOLをやっている22歳。
「(地元に帰ってきたのは、いつぶりだったっけ、夏は帰ってこれなかったんだよな...。)」
学生の時は正月とゆうだけで、はしゃいでいた事を思い出す。
美味しいご馳走に、年末の特番、普段会わない親族からのお年玉。
「(うん、今でも響きだけは最高だ)」
今となっては、親族を見て、未来に不安を感じたり、お年玉をあげる立場になったりと、少々息苦しい事を胸につっかえさせながら、昔の通学路をトボトボ歩っていると、よく帰り道に3人で買って帰っていた自販機の前についていた。
「も〜...ヒヨリも、シオンも予定決まってて、初詣一緒に行けないなんてさ!(家にいても暇だから散歩する羽目になったじゃん)」
ちょっとした文句を垂らしながら、あの時から変わらず好きな、ココアを慣れた手つきで買う。ガコン!少し大きな音に寝ぼけていた目が覚める。ココアを拾い上げながら、青春の帰り道がフラッシュバックする。
「(あん時は、楽しかったな〜恋バナとか、部活の愚痴とか散々したっけか...。)」
寒さに赤くなった掌にココアの缶を転がして暖める。カチッ、プルタブを開け、自販機にもたれかかる。
ふと、目尻に映った綺羅びやかな、白銀に顔を向ける。
ハッとする。覚めた目に燦然(さんぜん)とした銀雪が飛び込んでくる。
スッとココアをすする「(まぁ、大人も捨てたもんじゃないかなぁ〜いや、私も年取ったな、こんな雪綺麗に見えたりしなかったのに。)」
「よし、帰るかぁ〜」行きよりも少し軽快な足取りで、青春の帰路に手を振ってやった気分で言う。
やはりいくつになっても正月は普段より満足感がある。
「冬晴れ」
1/5/2025, 12:31:45 PM