天野沙愛 Sara Amano

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好きな人が、本をくれた。
「これ、面白かったから読んでみない?」

小説を読むのが苦手な私は、読むかどうか悩んだ。

「読むの遅くなってもいい?」

私は本を受け取った。

その日からあっという間に2週間が経過していてしまった。

仕事の忙しさが、本を読むのを後回しにしていた理由。

その日は酷く疲れていた。

部屋の隅に座り込むと、雨が降り出す音が聞こえた。

何となく、君が本を読むなら今だよ、なんて言ってるような気がして、小説を手に取った。

その本の主人公は、私みたいな人だった。

自信がなくて、いつも投げやりで、人間関係に悩む女の子の話だった。

その物語は、とても心に刺さって、最後は幸せを掴むお話だった。

私もこんなふうになれたらいいなと思ったけど、私じゃ無理なのかもと、やっぱり自分に自信がなかった。

“本、読んだよ、泣いちゃった”

彼にメールを送った。

するとすぐに電話がかかってきて、「どうだった?俺の小説」そう言った。

なんと彼は小説家だった。

私をイメージして書いたらしい。

「私もこんなふうになれるかな」

私はティッシュで涙を拭きながら言った。

「なれるよ、俺が幸せにしてやる」

それを聞いて、私は嬉しさに心が踊った。

もらった小説は、私の好きな本になった。

『すきな本』2024.06.15.20:01 天野沙愛.

6/15/2024, 11:00:12 AM