未知亜

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 遠い足音。
 何を言えばこの人に響くのか。分からなくて涙が出る。

 遠い足音。
 昔から碌な結果を運ばない。
 夕暮れに帰宅する母親の空気。不機嫌さを孕んだ父の、圧倒的な戦慄。静かな部屋にぴしりと破滅の気配が走る。

 そしていま、近付く足音。惨めな時間の始まり。
 なにも出来ない自分を、思い知るのみ。

『遠い足音』

10/3/2025, 9:58:33 AM