〈醜い好きが続きますように〉
今持っている感情が、愛か、恋か、それともただの滑稽な欲なのか、分からなくなる時が増えた。
これはブッタの言葉なのだけど、
「花が好きだというとき、あなたはそれを引き抜くだけでしょう。しかしあなたが花を愛していれば、毎日水をやるでしょう」というものだった。
これを聞いた時、初めて愛と恋の違いにしっくり来た。
だから驚いた。恋にも愛にも当てはまらない好きの感情があることに。
私は恋をしたのだ、遠い遠い時代を生きた文豪に。
文豪のファンはよく聞くが恋をしたのは私が最初だろう。
どうしても惹かれてしまったのだ。文字に。言葉に。
少し悪い癖に、酒癖が悪いところに、誰よりも女々しくて情けないところにでさえ。
私はあの人が好きだから同じ言葉を使う。
私はあの人を愛しているから何度でも文字をなぞる。
同じ時代に生まれて出会っていても、恋はしなかっただろう。今だから、どうやっても出会うことの出来ない今だからこそ、私はあの人に惹かれたのだ。
さっきから私は、恋だの惹かれただの言っているが、
実はまだこの感情の名前がわからない。
名前の無い感情に恋するという表現を使っただけで、恋では無い事は確かな気がしている。
ただひたすらに好きなのだ。愛でも恋でもないだけで。
きっとブッタも混乱するだろう、こんな感情があったことに。そしてどう名前をつけるのだろうか。この感情に。
恋とも愛とも違う、叶うわけが無い、切なくて寂しくて少し滑稽なこの感情はどう片付ければいいのだろうか。
ただ皮肉なことに、収集がつかず壊れそうなこの感情を、今日もあの人の言葉で、何とか生かし続けるのだ。
(恋か、愛か、それとも)
6/4/2025, 11:17:03 AM