月に願いを月に一度やってくるその日をいつも待ちわびていた。闇夜に浮かぶ月が満ちるとき、押さえつけられていた本能が顔を出す。歯は鋭く牙のように、爪は簡単にその柔肌を切り裂くように、全身を覆うその毛が、狼のものだと気づいてからもう何十年も経っていた。幼い頃に、その姿で暴走しかけてからはこの姿になること自体がトラウマだった。だから、この日が来る度に祈るのだ。今度こそ人間のままで、と。月に願いを届けるように、目を閉じて、指を組み、祈るのだ。
5/26/2023, 1:57:46 PM