「大好きな君に」 (*創作)
久しぶりに飲みに来たのに、君は男の話ばっかりする。また振られちゃったんだね。
もっと違う話ないのかなって毎度思ってしまうけれど、終電から降りて、駅から出る時に
「ほんとアンタに聞いてもらって清々したわ!」
なんて、満面の笑みを向けてくるから、毎度許してしまう。
「送ってくれてありがとう。アンタも気をつけて帰るんだよ!」
君の家の前で君の笑顔が雪にキラキラと反射した。
僕と君の間の1mは、玄関の電灯に照らされてほのかに橙色に染まる。
「うん。」
僕は拳をギュッと握った。
今度こそ、今こそ、君に伝えよう。
「じゃあ、またね!」
喉まで出かかった言葉たちは、目に入る君の屈託のない笑顔とゆらゆら揺れる白い手のひらに触れて白いアスファルトの上に落ちた。
散らばった言葉は集めるまもなく溶けていく。
僕は精一杯の笑顔で僕らしく君に魔法をかけてみようと思う。
うまくいかないかもしれないけど
「僕がついてるから」
君はうなづいて家に入った。
僕は大切な友達だから、友達としてできる精一杯。
また何か吐き出したいことがあったら僕を呼んでよ。
聞くだけならいくらでもできるからね。
でもね、大好きな君に、覚えておいてほしいことがあるんだ。
よそ見をたくさんしても最後に、君をずっと見つめる僕を見つけてね。
君の背中を思い出しながら、僕は空を見上げた。
今日も太陽はまだまだ昇らない。
3/4/2024, 5:45:52 PM