五月雨かなめ

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お久しぶりです。
私、五月雨かなめは今まで色んな物語を書いてきました。
そんな私はいつまでものんびりと生きて息をしてます。
そんなに気張って生きてる訳ありません。今は彼女さんの笑顔作るに必死で物語を書く時間がないだけです… でもその時の私は本当に嬉しいっていう感情の中書いてみました

桜の境界で、君を呼ぶ声

桜が散る音は、本来こんなにも静かなものだっただろうか。
ひとひら、またひとひら。
淡い光をまとった花びらが、ゆっくりと空へ昇っていく。

その向こうに、ぼんやりと日本が見えた。
街の灯り、遠くの山影、春の匂い。
全部が薄いガラス越しのように遠くて、触れられない。

「……俺、死んだんだな」

言葉にしてみても、驚きはなかった。
むしろ、どこかで覚悟していたのかもしれない。

あの日。
あの瞬間。
守りたいと思った人がいて、
その人を守るために身体が勝手に動いた。

結果として、俺はここにいる。
桜の境界。
生と死のあいだ。

「まぁ……守れたなら、いいか」

そう呟いたときだった。

――本当に、そう思ってるの?

風が逆流した。
桜が舞い上がり、視界が揺れる。

聞こえた声は、懐かしくて、温かくて、
そして何より、泣いていた。

「……なんで、勝手にいなくなるのよ」

その声は、俺が守ったはずの人のものだった。
泣きながら、怒っている。
怒りながら、必死に呼んでいる。

「守ってくれたのは嬉しいよ。でもね……
 あなたがいない世界なんて、守られても意味ないじゃない」

胸が痛んだ。
死んだはずの心臓が、もう一度動こうとするみたいに。

「俺なんか……いなくても悲しむ奴なんて」

「いるよ。ここにいるよ。
 あなたが思ってるより、ずっとずっと」

桜が渦を巻く。
光が差し込む。
遠ざかっていた日本が、ぐっと近づく。

その瞬間、思い出した。

あの人の笑顔。
あの人の怒った顔。
あの人がくれた言葉。
そして――あの人が、俺の名前を呼ぶ声。

全部、俺の中に残っていた。
全部、俺が勝手に「無い」と決めつけていただけだった。

「……俺は、誰にも必要とされてないと思ってた」

「そんなの、あなたが勝手に決めただけ。
 私は……あなたがいないと嫌だよ」

涙混じりの声が、桜の境界を震わせる。

その声に触れた瞬間、
俺の足元にあった“死”の影が、ゆっくりと薄れていった。

「……帰ってきてよ」

その言葉は、命令でも願いでもなく、
ただの“本音”だった。

俺はゆっくりと目を閉じ、深く息を吸った。
桜の香りが、確かにそこにある。

「……帰るよ」

そう言った瞬間、世界が反転した。

桜が一斉に舞い上がり、光が弾ける。
境界が消え、重力が戻り、
胸の奥で、確かに心臓が動き出した。

――ドクン。

その音とともに、俺は現実へと引き戻されていく。

遠くで誰かが泣きながら笑っていた。
その声が、俺を生き返らせた。

---任せて。
ここからは胸がぎゅっと締めつけられるほどの再会シーンを、
君の物語の熱をそのまま抱えたまま描くよ。

---

再会 ― 桜の下で、もう一度名前を呼ぶ

まぶたを開けた瞬間、世界はまだぼやけていた。
光が強すぎる。
音が遠すぎる。
身体が重い。

けれど、ひとつだけ、はっきりと分かるものがあった。

――誰かが俺の手を握っている。

温かい。
震えている。
必死に、離すまいとするように。

「……っ、目、開いた……?」

その声を聞いた瞬間、胸の奥が跳ねた。
境界で聞いた、あの泣き声。
俺を呼び戻した声。

ゆっくりと視界が焦点を結ぶ。
涙でぐしゃぐしゃになった顔が、すぐ目の前にあった。

「……なんで……なんで戻ってきてくれたの……」

声が震えている。
泣きながら笑っている。
その表情が、あまりにも必死で、あまりにも愛しくて、
俺は言葉を失った。

「……お前が、呼んだからだよ」

そう言うと、彼女はさらに涙をこぼした。
ぽろぽろと、止まらない。
俺の胸に顔を埋めて、子どもみたいに泣いた。

「バカ……!
 勝手に死んで、勝手にいなくなって……
 私のこと守って、それで終わりなんて……
 そんなの、許すわけない……!」

その声は、怒りでも悲しみでもなく、
ただただ“失いたくなかった”という叫びだった。

俺はゆっくりと腕を動かし、彼女の背中に触れた。
生きている。
温かい。
確かに、ここにいる。

「……ごめん」

その一言に、彼女は首を振った。

「謝らないで……
 戻ってきてくれた。それだけで、もう十分だから……」

顔を上げた彼女の目は、泣き腫らして真っ赤だった。
けれど、その奥にある光は、俺を責めていなかった。

ただ、俺を“必要としている”光だった。

「……俺なんか、いなくても――」

「いるよ」

言いかけた言葉を、彼女は強く遮った。

「あなたが思ってるより、ずっと。
 私はあなたがいないと嫌なの。
 守られた世界より、あなたがいる世界の方がいいの」

その言葉は、境界で聞いた声と同じだった。
でも今は、もっと近い。
触れられる距離で、俺の名前を呼んでくれる。

「……帰ってきてくれて、ありがとう」

その瞬間、胸の奥が熱くなった。
涙がこぼれそうになった。
死んだと思っていた心臓が、確かに動いている。

「……ただいま」

その言葉を言った瞬間、
彼女はまた泣きながら笑って、俺を抱きしめた。

桜の花びらが窓から舞い込み、
二人の間にふわりと落ちた。

生きている世界の匂いがした。

---

再会 ― 触れた温度の先に

彼女が泣きながら笑って、俺の胸に顔を埋めていた。
その震えが、服越しに伝わってくる。

「……ほんとに、戻ってきてくれたんだね」

その声は、まだ涙で濡れていたけれど、
どこか安心したような、ほどけた響きがあった。

俺はゆっくりと彼女の肩に手を置き、
そっと顔を上げさせた。

涙の跡が頬に残っていて、
目は真っ赤で、
それでも俺を見つめる瞳は、
まるで失ったものを取り戻した子どものように輝いていた。

「……泣きすぎだろ」

そう言うと、彼女は少しだけ笑った。

「だって……怖かったんだもん」

その一言が、胸に刺さった。
俺のために、こんなにも泣いてくれる人がいる。
それだけで、心臓が強く脈打つ。

「……ごめん」

「謝らないでって言ったでしょ」

彼女はそう言いながら、俺の手をぎゅっと握った。
その温度が、現実の証拠みたいだった。

しばらく見つめ合っていると、
彼女の視線がふっと揺れた。

迷っているようで、
でも、決意しているようで。

「……ねぇ」

「ん?」

「生きててくれて……ほんとに、よかった」

その言葉は、涙よりも重くて、
笑顔よりも優しくて、
俺の胸の奥を一瞬で溶かした。

気づけば、俺は彼女の頬に手を伸ばしていた。
涙の跡を親指でそっと拭う。

彼女は驚いたように目を見開いたけれど、
逃げなかった。
むしろ、少しだけ目を閉じた。

その仕草が、
“もう離れないで”と語っているようで。

俺はゆっくりと顔を近づけた。

距離が縮まる。
呼吸が触れ合う。
心臓の音が重なる。

そして――

彼女の唇に、そっと触れた。

深くじゃない。
激しくもない。
ただ、生きて戻ってきたことを確かめるような、
静かで、温かいキスだった。

触れた瞬間、
彼女の指が俺の服をぎゅっと掴んだ。

まるで、
「もう二度と離さない」と言っているみたいに。

唇を離すと、
彼女は涙を浮かべたまま、微笑んだ。

「……おかえり」

その言葉が、
俺の胸の奥に深く刻まれた。

「ただいま」

桜の花びらが、二人の間にひらりと落ちた。
生きている世界の温度が、確かにそこにあった。

---

結び ― 生きて、隣にいるという約束

彼女の腕の中で、しばらく俺たちは何も言わなかった。
言葉よりも、触れた温度のほうがずっと雄弁だったからだ。

窓から吹き込む春の風が、
ベッドの上に散った桜の花びらを揺らす。

生きている世界の匂い。
呼吸の音。
鼓動のリズム。

全部が、失いかけたものだった。

「ねぇ」

彼女がそっと顔を上げる。
涙の跡はまだ残っているけれど、
その瞳はもう、絶望ではなく希望を映していた。

「これからは……ちゃんと、隣にいてよ」

その言葉は、命令でもお願いでもなく、
ただの“願い”だった。

俺はゆっくりと彼女の手を握り返す。

「……あぁ。
 もう勝手にいなくなったりしない」

その約束は、
死の境界で聞いた声よりも、
桜の香りよりも、
ずっと重くて、ずっと優しかった。

彼女は安心したように微笑み、
俺の肩に頭を預けた。

「生きててくれて、ありがとう」

その一言が、胸の奥に深く染み込む。

俺は彼女の髪をそっと撫でながら、
静かに答えた。

「……お前が呼んでくれたからだよ。
 だから、これからは――」

言葉を区切り、
彼女の額に軽く唇を触れさせる。

「一緒に、生きていく」

彼女は目を閉じ、
その言葉を噛みしめるように小さく息を吐いた。

桜の花びらがひらりと舞い落ち、
二人の手の上にそっと重なる。

その瞬間、
死の境界で見た薄い光景よりも、
ずっと鮮やかな世界が広がっていた。

――ここが、帰る場所だ。

そう思えた。

そして物語は、
終わりではなく、
静かに新しい始まりへと続いていく。

3/21/2026, 9:35:07 PM