John Doe(短編小説)

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夏の幻


それは車窓から見た海
巨大な雲の下の水平線が輝いていた

それは灯台の下のセーラー服の学生
その子の髪が潮風に揺られていた

爽やかな夏の匂いが僕の心を慰める
懐かしいのは母の手の温もり

涙が溢れる 苦しいほど
どうかしてしまったんだろう
センチメンタルなんだ どうしようもないほど

母が教えてくれたお伽噺
それもこんな夏が舞台だった
はるか昔の話だ うろ覚えな物語さ
でもすごく特別なんだ 僕にとって

夏の幻
それは希望でもあり 悲しみでもある
複雑な心の機械さ 苦い過去を思い出させる
母がくれた世界にただ一人 僕は生きてく

夏の日差しはお伽噺の海へ溶けて消えてった
幻みたいに切ない気持ちを抱えて…

6/24/2023, 12:28:13 AM