ツユクサ

Open App

お題『未来の記憶』

「え、なんて?」
上手く理解しきれなくて、聞き返した。
「未来の記憶がある。」
「また突飛なこと言い出した…。」
奴の顔は変わらない。無表情というか、真面目な顔でさっきと同じ事を言う。動画かよ。

未来の記憶って何。記憶って本来は「起こったあと」の事じゃないの。もしそうなら矛盾してるじゃん。

言いたいことは山ほどある。だが、まあ、聞こう。こいつなりになにか正当な理由があるかもしれない。

「どういうこと?」
「守らなくてはいけない未来。」
きり、としながら少々得意げに言う。分からない。これが漫画だったら一ミリもわかんねえよ!と声を荒らげていたろう。

しかし、自分はこれでもこの人と3年はやってきた。ある程度推測は出来る。最近CMで見た本か?それともやってるゲームとコラボしてた、異世界モノのなんかか?遂に転生とかを夢に見始めたのか?いやまあ、新しい趣味に目覚めたのはいいことだ…。うんうん。
「まあいいんじゃない、未来を夢見ることはいいことだ…」と言おうとしたら、相手が口を開いた。
「明日、クレープ食べに行こう。」
「急だな…。」
突拍子も無さすぎるだろ。会話の流れを急に変えるなよ。お前はモーゼか。
「明日公園にクレープ屋さんが来る。何食べる?」
「え…まあ、妥当にチョコバナナ。」
「きっと手に生クリームこぼすよ。」
目を細めた。話の流れが本当によく分からず、首を傾げた。
「マジで何の話?」
「現代文で言ってた。予定は決められた未来なのでは無いか。約束が守られた時も、きっとそう。じゃあ、それを想像したら、未来の記憶があることになる、と思った。」
ギョッとして言葉が出なかった。そんなことを考えてたのか。なるほど。
「へんてこなこと考えてんね」
ふ、と思わず吹き出してしまった。それを見た相手は、によ、と笑って「変なことには魅力的な面白い考えがあるんだよ。」と、如何にもなことを言って立ち上がった。

2/12/2025, 2:51:47 PM