無音

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【95,お題:理想郷】

理想郷、理想的で完全な社会。
しかしこれには、省いた説明がある


「ライア~!これ見てよ!新作のゲーム、無料で配られるって!」

「んぇ...、...!えっマジ!やった~」

均一な青い空の下、スキップしながら駆けてくる友達
明るい太陽に照らされ、うつらうつらと船を漕いでいるところだった僕の意識は
その言葉に急速に覚醒した

「いやぁ、にしても今日はホントに天気が良いね」

「わかる、太陽も眩しすぎないし、ほどよく暖かくて涼しいし丁度良いわ」

今日の天気は晴れ、気持ちが良いほどの快晴だ
暑すぎず寒すぎず、薄着でもなんなく外でで過ごせる程の心地よさ
それに加え

「てか、学校がなくなったのマジ神だと思う!」

「それなぁぁぁ!?」

「義務教育とか意味わからんよ、金かかるしさ!勉強なん家で出来るだろ」

つい最近、学校が義務教育ではなくなった
理由は知らないが、学校に行く行かないの選択権が子供に委ねられることとなったのだ
その他にも、改正されたものはたくさん存在する

「子供権限とかさ、神機能だよな」

「わかるわぁ、子供なら菓子もゲームも無料って、考えた奴褒めちぎるわ」

この国はだいぶ変わった、”ここ数週間の間に”

「なあ、なんか変だと思わないか」

「なにがだよ」

「俺さ、毎日日記書いてんだ、それで...変なんだよ」

「”日付が動いてねえんだ”」

ぐにゃり、と空が歪んだ

ビキキッ、不快な音を立てて背景にヒビが入る

「”あの日”から、なあ...お前なんか知ってんだろ」

「ぁあ、...あ”あぁあ...!」


理想郷、”想像上の”理想的で完全な社会。

10/31/2023, 11:54:31 AM