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流れついた夜。
しぶきは星々の代わりをしては消えを繰り返す。波は引いても夜は留まり、辺りの音を徐々に飲み込んでいく。

私は心の蝋燭に火を灯し、波打ち際へと向かっています。あぁ、私は温かい。きっと見失わないで帰ってこれるよ。そう、背中を押されます。

身に纏った白いオーガンジーのブラウスがはためく。襟元から胸元にかけての植物を模したレースの装飾に、しぶきがあたりきらめいている。さらさらとした砂が趾間に隙間なく触れる。汗ばんだ足も砂と同化したようにさらさらと変化した。

私に灯る蝋燭の火は、呼吸するたびに小刻みに揺れます。辺りはもう、何も見えません。呼吸の音も不確かなのに、揺れる火から音が聞こえる気がするのです。あたたかさだけが確かで、ちょうどバイオリンを糸巻するような音が聞こえる気がするのです。

5/17/2023, 11:08:08 AM