一森くま

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卒業式が終わった。
担任の結びの挨拶もあと少しで終わる。

授業中に目で追ってしまうことも
妄想に胸を膨らませることも
きっともうない。

同じクラスだったのに
言葉をまともに交わせたのは
確か文化祭の前準備の時だけ。

「ありがとな!」って彼の言葉は
ただのクラスメイトに対して発した
フラットでなんの特別もない感謝だった。

何にも知らない
屈託のない笑顔を向けられた時
傷つけちゃいけないって思った。


私の好きな人は
私の好きな人のまま
終わることができる。

彼は友人と楽しそうに話しながら
私の横を通り過ぎて階段を降りていった。

何気ないふりをして近づくことは出来なかった。
本当の偶然をただ祈るように待っていた。
待っている時間で満足できた。

咲かず散らずで綺麗なまま
そっと胸の奥に仕舞われる
私の初恋。




3/30/2024, 2:37:00 PM