楠征樹

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《平穏な日常》#18 2026/03/11

 今日は快晴。この時期に降った昨日の雪が嘘みたいだ。
 通学途中にある、桜の木を見上げる。つぼみはまだ、それ程膨らんではいない。
 3年生が去った校舎は、普段より静かだった。期末試験も終わってて、少し怠い。来年は受験で大変だけど、この瞬間は考えることを許して欲しかった。
 午後の授業。英語の発音が流暢な帰国子女の先生が、手を止めて、ハッキリとした日本語でこう告げた。
「黙祷」
 目をつぶる。私は直接被災した訳ではないけれども、命を繋いでくれた、多くの人のことを想った。
 学校帰りは、仲良しな詠子と寄り道して、マックでソフトクリームを舐める。一緒の高校へ行こう、そう約束してる子だ。二人とも合格したら、気持ちを打ち明けるんだ。そう、決めている。
 夜、家族との食事。家族でもう一度、黙祷。
 普段は観ない、リビングのテレビを見つめる。今日は、勉強しなさい、とは言われなかった。
 お風呂に入り、いつもの時間にベッドの中へ。
 おやすみなさい。
 そして、明日の朝を、何の心配もなく、好きな人達皆で迎えられることに、感謝します。

3/11/2026, 11:42:01 AM