『境界線』(『遠くの声』は時間がないので過去のストックから投稿)
法螺貝の音が鳴り響く。それに合わせて、兵士達が雄叫びを上げながら進んでいく。生と死の境界線がもっとも近くなる場所――戦場へ。
それらを遠くで聞きながら、僕は森に身を潜めていた。偵察任務。忍びである僕に課せられたそれは、派手な武功を立てる事はない。それでも、戦を勝利へ導く重要な要素だ。
木々の間を音を立てずに進み、敵陣の一つに近づく。事前の調べで、敵の策の要となるだろうと踏んでいた。
不意に飛んできた苦無を避ける。後ろの木の幹に軽い音を立てて刺さる。
飛んできた方向を向くと、同業者の男がいた。
「こんな所に何をしに来た? 困るんだよねぇ、あちこち探られちゃ」
忍びらしくない軽い口調に隠す気もない殺気。そして、周囲には先行させた部下の死体が何人か転がっている。相当な実力者なのは間違いない。
「その言葉は、「ここには見られては困るものがある」と認めている事になりますよ」
「それがどうした? ここでアンタも死ねば同じだ」
そう言って男は肉薄する。僕も手裏剣を出して応戦する。
ここもまた、生と死の境界線だ。
4/17/2025, 4:26:11 AM