『求める力』
「羨ましい…」
私の耳に届いた独り言のような言葉。その声の方向に顔を向けると、あの子が虚ろな目をして立っていた。その目はまっすぐ私に向いている。
「…なに?羨ましい?」
「…えぇ、戦える力を持っている人たち。全員」
その言葉に腹から何かが込み上げてくる。吐き出すのに我慢なんて出来なかった。彼女の胸ぐらを掴んで叫ぶ。
「貴方が…唯一の、回復の力を持ってる貴方がそれを言うの!?」
そう、回復の力を持っているのは彼女ただ1人。だから彼女は必要不可欠な人材だ。…でも、私は違う。戦える人なんていくらでもいる。私は他の人達に負けないように色んなものを捨てて、しがみついて行かないといけないのに……。
睨みつける私に、彼女は目を緩めて笑った。
「私はね、守る力が欲しいの。貴方を守る力が」
「私を、守る力…?」
狼狽える私の手を彼女がそっと掴んだ。その手は振りほどけるはずなのに、何かでくっついているかのように離れなかった。彼女がキュッと力を込める。
「大丈夫、もうすぐで私、完璧になれるの。そうしたら貴方をずっと守れるようになる」
「な…なにを言っているの…?何をするつもりなの…!?」
何も答えずにただ微笑むだけの彼女。
目の前にいるのは彼女のはずなのに、まるで別人のように見えた。
【ないものねだり】
3/27/2026, 6:17:57 AM