霜月 朔(創作)

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元気かな



元気かな。
…なんて。
君に聞けたら、良かったのに。
今さら、そんな言葉、
風にまぎれて、消えてしまう。

君は、いつもそこにいる。
俺の隣に立って、
何も知らずに笑っている。
それが――堪らなく、悲しいんだ。

何ひとつ、奪えはしない。
声も。手も。心も。
未来も。身体も。運命も。
俺はただ、
ここで朽ちていく枯木のように、
空を見上げているだけ。

昼は、陽のふりをして。
夜は、夢のふりをして。
いつも、君の横顔ばかり、
追いかけていたけど。

触れないことが、
優しさになるなんて。
一体、誰が決めたんだろう。

それでも、俺は。
黙って、微笑み続けるんだ。
君が幸せでいられるのなら。
……そう、思って。

元気かな。
心の中で、何度も尋ねる。
幻の君からは、答えなんか、
返ってこないことも、
ちゃんと、わかってる。

紡げなかった言葉は、
解けて、空に舞って。
風に攫われ、消えてゆくけど。

それでも。
どうしても、言いたいんだ。
君に届かなくても、いい。
俺に、聞こえれば、それだけで。

元気かな。
……俺はまだ、ここにいるよ。


4/10/2025, 9:31:26 AM