「海の底まで行ったら、永遠が手に入るのかな」
君が突拍子もないこと言う時は何か悩みがある時。それをわかっていても俺はぶっきらぼうに答える。
「人間は海の底なんて行けねーよ。機械つけても十数メートルだ」
「でもほら、人魚とかだったら」
「おまえは人魚じゃねーし。それに人魚だって王子に選ばれなかったら海の泡になるんだぜ」
有名なアニメはハッピーエンドだけど、実際はそうじゃない。
「永遠なんて…どこにもない。ないんだよ」
そっか。当たり前だよね。わかってる。俺だって。
ただ俺はね。
君は寂しくそう答えて、言葉を切った。
俺たちはどこにも行かない。ここにいる。だけど永遠はありえないことも、知っている…。
君はしばらく黙ったまま、ふいに小さく笑って言った。
「でも、俺は人魚姫より幸せだね。だって泡になることはないもの。王子に選ばれたもんね?」
「よせやい」
自分で言ったことだけど吹き出して、それに君ももう一度笑った。
▼海の底
1/20/2024, 1:01:09 PM