2(1件のLINE)
出会ってから一年、付き合いだしてから二年。の、計三年。
人生というスパンで見れば決して長いとは言えない長さだ。しかしながら人ととなりを知るには充分な時間だと、男は思う。
決していい加減で浅い付き合いをしていたつもりは無い。態度でも言葉でもそれを示してきた筈だ。
男は明確に好意を言葉で伝えたり、態度で示したりするのは元々不得手な方だった。それでも自分の思いを伝え示したのはひとえに手離したくなかったからだ。言い寄って来る者は過去に何人もいたが、男の心に触れたのはその人ただ一人。
先程スマートフォンを鳴らした一件のLINE。画面に表示された通知には謝罪と、さよならの文字。
嫌いになったとか、他に好いた奴が出来たというならば納得はいかないが別れに頷きもしただろう。しかし最後に男が見た相手の顔は、自分は男に相応しくないと泣いた顔だった。引き止めるまもなく電車に飛び乗った相手に追うことも叶わない。電話もLINEも応答が無かった。
そして、先程の別れの言葉。
相手の心が離れての別れなら、しょうがない。しかし、そうでないのなら……。
なぁ、知ってるだろう。俺の、お前へ向けた一途さと気持ちの重さを。
この通知音はスタートの合図だ。男と、その想い人との追いかけっこの。
男はLINEのトーク画面に一言、返信を送る。
「必ず捕まえる」
7/11/2023, 11:15:42 AM