300字小説
はじめまして、よろしく
僕はずっと君の隣にいた。眠るときは添い寝の相手。泣いたときは抱きしめてハンカチの代わり。お出掛けにも旅行にも君は連れていってくれた。君が大きくなってからは『ずっと』とはいかなくなったけど、君が自立して家を出るとき、一番最初に持っていくと決めたのも僕だった。そして……今、花嫁の控え室で、僕は椅子に座って君を見ている。白いウェディングドレス姿の君、とても綺麗だよ。……でも、さすがにもう君とはお別れかな?
君から離れ、眠りについて目が覚めると、僕は新しい身体になっていた。
「見て! 私の小さい頃からの友達のぬいぐるみ。作り直したんだ」
君が僕を君に似た赤ちゃんの枕元に置く。
「これからは、この子をよろしくね」
お題「ずっと隣で」
3/13/2024, 11:52:18 AM