るに

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誰もいない教室。
どこか懐かしくて
涙は溢れて止まらない。
あの日、
私が君の手を取って
止められなかった日。
君はよく死にたがりの顔をしていた。
だから私は
いつも君を連れ出して
この丸い地球で
面白いものをたくさん見せてあげた。
私が君の世界を広げてあげたくて、
君が見えてない世界は
もっと面白いものがあるんだよって
たくさん教えてあげた。
その度に君は楽しそうに笑ってた。
でも数日経ったら
すぐ顔は元の死にたがりに戻って
何かブツブツ言ってるんだ。
きっと私の見えない所で
君は十分何かに傷つけられてた。
なのに私は気づかなかったんだ。
気づけなかったんだ。
やっと気づいた時には
もう遅すぎた。
私が何を言っても
どこに連れて行っても
君はもう笑ってはくれなかった。
誰もいない教室。
君はこう言った。
ありがとう、もういいよ。
最後に1つお願い。
私と一緒に空を飛んで欲しい。
私でもわかる直球な言葉だった。
正直私は
この地球に面白いものなんて
最初からないと思ってた。
つまらなくて、退屈で、
コンクリートばかりの星。
だから君となら飛べると思った。
そう、思ってしまったから。
私は君を引き戻した方がよかった。
まだまだ面白いものはあるよ。
もう無いと思うなら
私が君を笑顔にさせるよ。
だからさ、こっちにおいでよ。
私と生きようよ、って。
なのにフェンスを乗り越えて
深呼吸して飛んだんだ。
大空に。
"Good Midnight!"
君の手は最期まで震えてた。
私はどこも痛くなかった。
私はそこで初めて
自分が不死身だと知った。
あの時手を取って止めていれば
君を辛いことから
全力で守ってあげていれば
君は笑って楽しく過ごせていたのかな。

9/6/2025, 2:01:23 PM