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紅茶の香り

大きな森の大きな木の根元に小さなドアがついたお家がありました。

シマリスの夫婦がその木には住んでいて、その小さなドアの向こうでは、シマリスの奥様が紅茶を入れていました。

柔らかな紅茶の香りが小さな小窓から外に漏れて木立たちがその葉っぱを小窓にのばして深呼吸をしていました。

秋の木立は朱や黄色に色づいて、どんぐりの実も鈴なりのようにつけていました、今年もまた冬の準備の季節です。

奥様はティーカップを持ちながら窓辺に向かい
外を眺めました、木の実を拾いに出掛けた旦那様は、まだ戻らない様子です、そろそろ空が茜色に変わる頃です、奥様は飲み終えたティーカップをテーブルに置くと、小さな木の扉を開けて外に出ました。

ポーチからちょっと背伸びをしながら、奥様は遠くを見つめています、その眼差しの先に奥様は旦那様を見つけました、小さく揺れるその影は徐々に近づきやがて彼だとはっきり分かりました、奥様は背伸びをやめてため息ひとつ、微笑んで揺れるその影に手を振りました。

大きなリュックいっぱいに冬支度の果物やら木の実やら温かい干草やらをつめて、体をゆらし
旦那様の影が近づいて来ます。

やがて、旦那様は待っている奥様のところまで来て 「ただいま」と言い 奥様は「おかえりなさい」と言いました。

お日様の匂いのするリュックをおろし、旦那様は奥様に1輪のピンク色の秋桜を差し出しました、奥様は微笑んで 「綺麗ね、ありがとうお疲れ様」と旦那様に労いの言葉をかけ、二人はその小さなドアの向こうに消えて行きました、
低い夕日が大きな森の小さな二人のお家に差していました。

しばらくすると、また小窓から紅茶の香りがして、二人の笑い声が聞こえていました。

「今夜はパイを焼きましょうね」

明日も好き日でありますように。


a little happy ちょっと嬉しいを集めよう

小さな幸せやがて大きな幸せの物語。

そういう意味よ、分かった?(笑)


令和6年10月27日

心幸



10/27/2024, 10:37:23 AM