有り得ないことだらけだった。
誰かから伝え聞いた「普通の生活」なんてものとは縁もないし、そして多分その誰かは死んだ。
顔も名前も覚えていないからそうだろう。
そんな世界で生きてこられたのは、まさしく「奇跡」としか言いようがない。
振り返ればあまりにも多くの「奇跡」は起こっていた。
いや、起こしてきた。
起これば生、無ければ死
なら「無い」という事は無いとなる。
馬鹿げた主張だと笑えばいい。
手も足も出ない時は馬鹿げた事を言うしかないからだ。祈るしかないからだ。
「奇跡よ起これ、起これ」と。
後は魂が削れる程に祈るしかなかったから、いま僕たちはここにいて。
仮に祈らずとも助かっていたとて、魂を差し出せない生に意味なんてあるのだろうか。
そんなもの、助かったなんて言えるのだろうか。
詭弁だ。
それでも僕たちがこの両足で立つには必要な事なんだ。
10/3/2023, 1:12:54 AM