未知亜

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ㅤいつか雨上がりの虹を見上げ、笑ってぬかるみを歩く日を僕はずっと信じていた。
ㅤそぼ降る雨から君を護れる、傘みたいになりたかった。風が吹けば一緒に濡れて、止まないねえと空を眺めて。それだけで良かったのに。

ㅤ紙切れからそっと離した朱色を、僕は無造作に拭き取る。軽くなった左の薬ゆび。気になるのはきっと今だけだ。
ㅤ僕の空にもう雨は降らない。




『雨上がり』

6/2/2025, 7:50:18 AM