僕の妻は
愛情を注ぐのが得意です
庭の薔薇も
部屋の文鳥も
ベランダにいる蜘蛛にさえ
日々愛情をかけていました
薔薇も見事でしょう
だけど
お見合い結婚した
夫の僕には
愛情が注げないの
と言いました
したがって
僕等には
子供が出来ませんでした
僕は妻に
触ることができなかったものですから
でも
周囲は子供を期待しました
どちらも良家の人間ですから
期待は相当なものでね
妻は日に日に憔悴していって
もう限界だったんだと思います
だから
妻が子供を何処かから連れてきた時も
僕は咎めなかったんです
子供たちはみんな
愛情が足りない顔をしてましたから
刑事さんが
うちの地下室で
大勢の子供を見つけた時
ちょっと嬉しかったんです
彼等は愛情を注がれて
涙を流していたでしょう
妻が薔薇と同じように
水を溢れるほど与えて
美しい部分だけ残るように
剪定していましたからね
ああやっぱり妻は
愛情を注ぐのが上手だなぁ
なんて思いました僕は
あとね
もしかして ですけど
子供がいなくなれば
妻の愛情は
僕に注がれることがあるかもしれない
って思いましたから
ちょっと嬉しかったんですよ
妻は
愛情を注ぐのが上手なものですから
ちょっと愛情が
溢れてしまうこともありますけどね
11/28/2022, 4:36:20 AM