佐吉智明

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1.光と闇の狭間で

君の声が聞こえた気がした。
僕のことを呼んでいるようだった。
声の方向を向くとまぶしいほどの光が僕の視界に入ってきた。
目の前の世界が真っ白になって、妙な落ちつかなさを覚えた。
僕は静かに目を閉じた。
僕の心を乱すまばゆい光が不愉快だった。
もっと落ちついた気分でいたかった。
目を閉じれば深い闇の世界へ落ちることができる。
僕を包む漆黒の闇は、僕の目をその黒で塗りつぶす。
そう、光も闇も似たもの同士だ。
極端な色合いで僕から視界を奪っていく―――。

君と僕は違う世界の主人公。
光と闇の狭間で出会う。
君と僕の音色も声色も、天の上のことまでも。
理解し合う運命か。
別れゆく運命か。

誰も知らないことである。

12/3/2023, 7:15:37 AM