ハイファイ

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『美しい』

重たい瞼を押し上げると赤く濁った視界が広がる。
投げ出された手足はピクリとも動かない。半開きにした視界には青白く放り出されたような手があり、そのの下には鮮やかな赤色が広がっている。
体には力が入らなかった。

足音が近づいて、目の前に靴が現れた。僅かに捉えられる視界を靴の持ち主に向ける。

見えたのは、手に刃物を持って無表情で見下ろす親友だった。

周囲へ互いに親友だと豪語するほどに仲は良かった。表情が豊かで、表情をコロコロと変える親友と過ごすのは飽きなかった。

その親友が感情の抜け落ちた顔でこちらを見下ろしており、服や顔には自分の返り血が飛び散っていた。普段からは考えられない姿だった。

膨大な情報量で、見たことのかい親友の美しい姿を脳に焼き付けて意識を落とした。

6/11/2025, 3:57:01 AM