「はい、チョコレート。言っとくけど義理だから」
半ば強引に受け取ったチョコレート。なるほど、確かに外箱はいかにも市販品らしくて「手間暇一切かけてません」と言外で主張している様だった。複雑な心境のまま席に着くと、前にいた親友がニヤついた笑みを浮かべている。
「それ、あの子からだろ。伝えたい事があるなら、直接言えばいいのに、案外不器用なんだなぁ」
「何が言いたいんだよ」
「ほぉら、こっちはこんな調子なんだからさ」
「ちょっと貸してみ?」と既に鞄の中に入れたチョコを見せると、箱の後ろを指さす。
「テクスチャがここだけ禿げてるし、この包装紙も店員が巻いたものじゃあ無いな」
「つまり?」
「一回開けてから戻したって事だよ」
「へぇ、なんの為に」
「はぁ。それが分からないようじゃ、伝わらないって話だ」
遠目からこちらを見つめていた女子は、今にも襲って来んばかりに顔を紅潮させていた。火山の噴火を予期した彼は「やばいやばいっ」と慌てて席に戻る。
「ま、とにかくだ。ちゃんと応えてやんなよ。お返しにも、彼女の気持ちにもな」
応えるも何も、こっちは何も伝わってねーっつーの!
2/12/2023, 11:26:15 AM