その日、自宅でちょっと軽くファンタジーに頭を支配されていた俺は、ふとした瞬間、こんなことを考えた
「人型の別種族になってみたいな」
それがマズかった
なんでそんなことになったか、全くわからないが、たぶん下手なことを考えてしまったからだろう
俺の体は輝きに包まれ、全身がなんとも言えない気持ち悪さに襲われて、おさまった時には体に強烈な違和感を覚えた
急いで鏡を見る
自分の頭から、後ろ向きに二本のドス黒い角が生えていた
あと耳は尖り、背中に小さい翼
魔族じゃねーか
何だこの状況
俺の脳みそは理解が追いつかず、現実を受け入れることを拒否していた
そんな風に動揺しているさなか、鳴るインターホン
こんな時に誰か訪ねてきたのかよ
とりあえず、モニターを覗く
訪問してきた人には、ドス黒い角が生えていた
魔族じゃねーか
出たほうがいいんだろうな
モニター対応とかせずに、もうドアを開けてしまおう
「こんにちは」
「ああ魔王様、お会いしたかったです」
俺は知らないうちに魔王になっていたらしい
偉くなったもんだ
「あの、いつから俺は魔王になったんですか?」
「さきほど、あなたが念じた瞬間です」
なにがなんだかわからないんですが
と、目の前の魔族の背後に広がる町並みを見ると、建物の様子がおかしかった
なんか、ファンタジー世界の建物を現代にあわせてアレンジしたかのような姿
えっ、世界観いつの間に変わったの?
「あなたの願いをどこぞの神が勝手に拡大解釈して叶えてしまったのです
そして、この世は高度なファンタジー文明世界に変わってしまったわけで、実は私もさっきまではただの会社員でした」
聞くと、全人類がなんらかのファンタジーな存在になっており、願いの発生元の俺以外は、なぜかこの状況を理解しているらしい
「私たちは元の生活に戻りたいので、是非とも魔王様にはその神との交渉、場合によっては実力行使をして世界を戻してほしいのです」
俺のなにげない思考によって大変なことになったな
どう考えても俺は悪くないけど、原因の一端を担うものとして、責任は取りたい
仕方ないので、俺は世界を改変した神のもとへ向かうことにした
「勇者などが襲ってくるかも知れませんので、気をつけましょう!」
勇者襲ってくんのかよ
「勇者って、元々の世界にもいて、別の人生歩んでたんですよね?」
「はい
元の世界よりこの世界のほうがいい人は、勇者として覚醒しました
元の世界を取り戻すために今の世界を滅ぼす魔王様を倒せば、結果この世界を守ることになるため、勇者と呼ばれています」
世界を滅ぼす魔王を打倒する
字面だけ見たら確かに勇者だわ
動機は現実逃避染みてるけど
ま、俺は他人がどうだろうと元の世界の生活が気に入ってるので、この変な世界は滅ぼすとしよう
そして、冗談を本気に受け取って拡大解釈したどっかの神には文句を言わねば
さあ、魔王の旅立ちだ!
……実はちょっとワクワクしてたけど、移動手段が馬車をモチーフにしてるものの、魔法で動くだけのただの自動車だったのにはガッカリした
4/27/2025, 11:10:10 AM