Ame

Open App

彼は、ビールの泡を立てることが、とても上手だ。
「ビール、注いでくれない?」
「いいよ」と、彼は慣れた手でビールを空けて、私はジョッキを両手で持つ。どんどんジョッキへと、ビールが注がれていく。注がれていくに連れて、彼が持つビール缶が、どんどん上へと上がっていく。
「どうぞ」
彼はドヤ顔で私を見た。本当に上手だから、何も言えなくて悔しい。
泡が今にでも溢れ出しそうだ。ジョッキのギリギリで耐えている。
「なぜ俺がこんなにも泡を立てるか、知ってるか」
確かになんでだろう。少し考えてみた。
「じゃあ、俺が告白した時の空を覚えているか」と、私に聞く。理解してしまった瞬間、私の口が開いたままになってしまった。

「あの時、ビールの泡のような入道雲が浮かんでいたからだよ。」

《入道雲》

6/29/2024, 12:18:58 PM