思いのたけを書いた手紙を手に、海辺を歩く。
波打ち際で、打ち寄せては、引いていく波をぼんやりと眺める。じっと見ていると、自分も引き込まれそうな気になってくる。
手紙もいっそ、海が運んでくれればいいのにと思う。海にかざしてみる。すると、手紙の中の文字たちが、はらはらと波にこぼれていく。ほろほろほぐれて、あちらこちらを行き来する。
しばらくすると、海の向こうの奥深くのほうへ引き込まれていく。するする、するすると。
それを眺めていると、なんだかすーっと心が軽くなってくるのだ。
「波にさらわれた手紙」
8/3/2025, 8:25:57 AM